2022-12-01から1ヶ月間の記事一覧

148 稼働

厳しい宣告に聞こえるかもしれませんが、言わなければならないことがあります。私は私の中の、非常に細かくて、プロフェッショナルな、神経質な部分が言うところの、「これでオーケー」、「問題なくなった」、「完全体に復活した」、そういう状態にはもうこ…

147 涙のわけ

私が滅多なことで泣いたりしないことくらいあなたは知っているでしょう。それでも毎日のように涙を零したい、そのこともあなたは知っているでしょう。 もちろん誰の前でも泣くわけじゃない。泣くなら一人で泣いたっていい。でも、一人で泣きたくない時がある…

146 ゆるす力を

準備しながら待ちなさい。随分待たせているとか、早く行かないといけないとか、そういったことはありません。ゆったり景色を楽しめるくらいの、心の余裕が必要です。急ぐことはないので、ただ、まんなかにいるか、気にかけて下さい。本来ありたい姿を想像し…

145 受付嬢からのエール

必要なものはもう揃った。あとは手続きが要るらしい。材料は揃った。調理をしよう。組み立てをしよう。今、受付にやって来て、必要なものを提出した。それじゃあ、用紙の空欄に書き込んでくださいね、と受付が言う。この世界には、手続きがある。 混沌のなか…

144 春恋し

ねえ、あの人どうして、あんなにスピリチュアルな感性があって、創造性があって、目に見えないものへの嗅覚がすぐれているのに、目に見えるものばかりが好きなのかしら。本当に自覚がないって言うのかしら。到底、信じられない。 ああ、知らせてほしいんだと…

143 手水舎

また汚れてしまいましたと 私は泣いた 大きな空色の鳥のような 大天使だ 洗いましょうね 珠をそっと とり出した それを 綺麗な水の流れに包み 洗うとき 一瞬すべてが遠くなる それは絶望したのに かすかに似ていて 私は怖くなる 怖くないよ 怖くないよ 天使…

142 ひみつの作業所

どんな時代の どの風景も 思い返せば愛しかった 憎しみのその先を 垣間見たようなときも 心の底から 地獄のようだと思ったことも 思い返せば 光の片鱗があった 遠く眺めれば 愛を感じた 今この部屋にも 愛が届く 地獄じゃない ここは 秘密の製作所 届いた愛…

141 ヒメは降る

そのヒメは、燭台を持って、降りていった。 真っ暗く、光のない岩場だった。 ヒメはひとりで下った。ずっとずっと奥地まで、深く深く下った。 どのくらい深いところまで来たか、分からなくなったころ、底にあたった。 光はもう、はるか断崖絶壁の、上の方に…

140 冬至近し

毎日、この世界にまみれていることを泣かないで、やるせないと焦らないで、やめないで。もう時間の流れなどなくなってしまいました。これが1日、これが1年という、そんなふうに物理的に捉えられるものはなくなってしまいました。ぜんぶ伸びちぢみして、くる…

139 上澄みの世界

ふしぎな世界に来たらしい ありとあらゆる 色と 意思と 波のすべて そのごくわずかの上澄みを 固めて 見えるように くふうしてある 流氷でもって 海を知れず 雨粒でもって 空を知れないように ほとんどのものは 上澄みだけでわからない たいせつなものは目に…