144 春恋し

 

ねえ、あの人どうして、あんなにスピリチュアルな感性があって、創造性があって、目に見えないものへの嗅覚がすぐれているのに、目に見えるものばかりが好きなのかしら。本当に自覚がないって言うのかしら。到底、信じられない。

ああ、知らせてほしいんだと、そういう人を見たとき思うの。わたしが伝える役割なのだって。あの人は本当は霊性に目覚めていく人なのだ、そうやって生きていく人なのだ、って。そのつもりで接してきた。いつかは分かってもらえると信じて。でも、そうでないのかもしれない。分からない。彼らはあのまま死んでいくのかな。目に見えるものを追いかけ、達成し、貢献し、手に入れて。そのような定めなんだろうか。

あるとき、あまりにも世界が違うんだと思って打ちひしがれてしまったの。見えるのもの一辺倒を何十年もやってきた彼ら、生まれたときから浮ついていたわたし。もう認めたほうがいいのかしら、何もかもが違うことを。わたしはずっと自分を彼ら側の人間だと思っていたわ。今考えたらそんなわけがないのに。なんだかガックリきちゃったの。いい加減に自分の性質を認めないと話がすすまないよね。

目に見えない話は「ハマる」ものでも「趣味」でもない。それはわたしのことを言う。わたしと、あなたの存在のことを言う。彼らがそういう世界観に深入りせずとも死んでいけるとしたら、わたしには出る幕はなく、もうすべてが完全にまわっていて、それで構わないということなんだろうか。

冬がもう、つらすぎる。夏はあんなに活発だったのに。まだ葉が枯れきってすらいない。春までは長い。季節も、天気も、いちいちこの場所は大変すぎる。