139 上澄みの世界
ふしぎな世界に来たらしい
ありとあらゆる
色と
意思と
波のすべて
そのごくわずかの上澄みを
固めて
見えるように
くふうしてある
流氷でもって
海を知れず
雨粒でもって
空を知れないように
ほとんどのものは
上澄みだけでわからない
たいせつなものは目に見えない、と
固形の世界のひとは言うけど
あなたの姿も
わたしの姿も
ほんとうは目に見えない
わたしはまるで
ここにいるのにいないよう
あなたのことが
見えているのに見えぬよう
この目は
神秘の水晶
時に
目に映る景色は
残酷だけれど
わたしの頭もつま先も
見えるようにしてここにある
上手にできているでしょう
わたしの上澄み
ちいさな欠片