140 冬至近し

 

 

毎日、この世界にまみれていることを泣かないで、やるせないと焦らないで、やめないで。もう時間の流れなどなくなってしまいました。これが1日、これが1年という、そんなふうに物理的に捉えられるものはなくなってしまいました。ぜんぶ伸びちぢみして、くるくるまわって、固まったり広がったりしているのです。

延滞していると焦ることはありません。ひとつずつレプリカは返されています。本物に変わっています。わからないでしょうか。わからないのは、本物だからです。やわらかいからです。酸素のよう、空気のよう、あなたが魚ならば、水のよう、だからです。それが少しずつ変わっていくからです。気がつかないのです。美しい変化なのです。ほんとうに馴染む服は着ている感覚もないかもしれません、そうでしょう。あなたは気がついたら泳いでいるのです。気がついたら宙を優美に舞っています。少し遅れている気がしたとしても、大丈夫、それは深い愛しさゆえでしょう。にせものの世界は想像したよりも美しく、想像したよりも愛しく、楽しく、苦しみすら甘く、別れがたくなった。名残惜しむ気持ちを尊重します。思い出をなぞり、別れの言葉を推敲しましょう。それができるうちは、やるときです。時が来たなら流れるように、気がつかないうちに、そんなことをも考えなくなります。