141 ヒメは降る

そのヒメは、燭台を持って、降りていった。

真っ暗く、光のない岩場だった。

ヒメはひとりで下った。ずっとずっと奥地まで、深く深く下った。

どのくらい深いところまで来たか、分からなくなったころ、底にあたった。

光はもう、はるか断崖絶壁の、上の方に星のように見えた。

そのヒメは、来た道をまた戻ることにした。

崖にしがみつき、登ることはできないが、来た道をしずかに辿ることができた。

ヒメは確認した。

どう周り、どう掴み、どこを登れば、上がって行けるのか。

少しでも足がかりがないか、低くなっているところはないか。

順を辿り、ひとつひとつ、魂に刻むように確認した。

ヒメはひとりで登った。

誰も連れてくることはできなかった。

ヒメは星までの地図を描き、

束の間の休息をして、

次には祈り始めた。

大きな大きな力が必要だった。

彼の脚に力を。

あの子の目に光を。

ヒメは時に降る。ヒメは時に登る。

しかしてヒメは祈る。

いくらでも、祈る。