145 受付嬢からのエール

必要なものはもう揃った。あとは手続きが要るらしい。材料は揃った。調理をしよう。組み立てをしよう。今、受付にやって来て、必要なものを提出した。それじゃあ、用紙の空欄に書き込んでくださいね、と受付が言う。この世界には、手続きがある。

混沌のなかで何もわからず泥まみれになるような世界は終わった。思想と方向が整った。少なくとも、どちらが前か、右か左か、北か南かと、座標をぜんぶ失ったような時代は終わった。座標はしずかに戻ってきて、光の位置は固定された。そうなってから、心がしずかに居場所を掴んだ。心は、ずっと天地がぐるぐるまわり、めまいのする中で、けなげに中央を探しつづけていた。今もくるくる回りはするが、輪が縮まったようだ。観覧車や、遊園地のアトラクションから、フラフープくらいに、手近なところへ戻ってきている。

魔法には手順があることをもう一度確認しなければならない。料理と同じだ。手順にそえば、発動する。魔法はどこで発動するか。現実の中に。生活の中に。誰かとあなたの間に。それは目に見えない材料をもとに、目に見える場所に発動する。ならば手続きとは何か。こちらとあちらを繋ぐこと。思想を言葉に変えること。祈りを生活に変えること。心を行為に映すこと。諸々の手続きを通して、あなたとこの世界は本当に繋げられる。きっとまだ安心できないかもしれない、風船のように浮かんで、細い紐で繋ぎ止められているだけだと思うかもしれない。でも、あなたはもう受付までやってきて、手順を知らされた。安心できる所以がここにある。道が分かれば行くだけでしょう。地図があるなら迷わないでしょう。それは簡単なことだとは言えないけれど、地図なら既にあるでしょう。看板もあるでしょう。強く、強く、どうか力を。どうか強くあるように。もっと力を。力のための光を。どうか届きますように。