159 幻の自分

どうやらみんながみんな、幻を見ていたらしい。当然のことだ。これまでずっと実体を伴っていなかったんだから。彼らは自分自身を見ていただけだった。結局、私と彼らは繋がれなかった。共感もできなかった。実体で触れ合っていなかったから。誰か教えてくれればよかったのに。あなたはどこにいるの?と、きいてくれればよかったのに。私が自分で自分の実態を作り出すまで、それは誰にも見えなかった。自分の実体のないところが、液体のように、水面のようになって、誰かの気持ちがそこに映るのを見ていた。映るものを見てさえいれば、私はその人に好かれることも、嫌われることも簡単だった。でも、それは繋がっているとは言えなかった。どれだけ親密さを演出しようとも、それは一対一の、人と人、心の心の関係ではなかったのだ。