160 待ち時間の寸劇

私は乗り物に乗って

目的地まで運ばれている

これから大事な仕事があるのだろうか

それとも大好きな人と待ち合わせでもしているのか

分からないが

どこかに運ばれている

 

着くまでのこの時間は

待ち時間みたいなものだ

それで私は

乗り物の中で

映画を観ている

これは暇つぶしでもあるが

勉強にもなるのだ

映画の内容は

もちろん面白いものがいいが

あまりのめり込んで

影響を受けてもいけない

万一、夢中になって

降りるのを忘れては大変だから

集中しすぎてもいけないのだ

それでも

よくあるストーリーでは退屈だから

適度にスパイシーで、

少し刺激があって

個性的なものがいいだろう

そんな映画のような劇のようなものを観て

私は暇をつぶしている

この映画の中で

どういうつらさがあっても

素晴らしい幸せな瞬間があっても

そういう映画だというだけであり

私のものではないように思う

もう随分こうして乗っているが

いつごろ到着するのだろう

誰かに訊いてみたい