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誰しも一人だけで失敗することはない。声をかけてくれる人はいる。気にかけてくれる人はいる。救おうとしてくれる人がいる。愛ゆえに助けようとしてくれる人がいる。でもその人のことなんて、まったく目に入らずに、堕ちていく。もう、敵しか見えなくなっていく。絶対に敵だけではなかったはずなのに。その後はもう、いくら思い返しても、記憶がどんどん書き換わり、一人の被害者たる自分、そして、その当時、誰一人味方はいなかったという感覚だけが、月日が経てば経つほど、体に染み込んでいくようになる。ある日自分が気づくまで。敵だらけだと思っていた景色も、画角が狭くなっていただけで、本当はそこにもかしこにも味方はいたこと、隣で愛してくれる存在のいたことに気づくまで。