112 欲しい

ある日、天使が降りてきた。
大きな銀の皿を私に渡して、こう言った。
この上に、欲しいものを全部のせなさい。
何でも良いのですよ。
つまり食べ物でもいい、理想の人でもいい、能力でも、容姿でも、暖かい家庭でも、幸福感や安心でも。
ありったけ思いつく限りのせて。
この皿は無限に広がるのだから、のせすぎということはありません。
のせたら、どうぞ、全部食べてください。みんな手に入れられます。気の済むまで。満たされたと感じられるまで。
だから、何が欲しいか言ってください、ここに表してみてください。

バイキング形式が苦手な私は、よく分からずに、いつか、食べたいもののことすらよく分からなかったときみたいに、右往左往してしまいました。のせていいかが分からないし、のせてみてはまた戻したりしてしまいます。あぁ、三種類くらいだったらいいのに、と思います。赤か黄色か青の服だったら、どれが着たいのかくらいは分かるから。ところが私の欲しいのは服ではないのです。