81 電波メモと近況の日記 20220325

もう少しで着地できると書いてから1月半になった。まだ着地できる気はしない。
体調を崩した。それもかなり。
思い通りの展開が起きている、と思った。
その日の仕事には行きたくなかった。卒業や就職の話を聴くのにも疲れていたし、どんな優しいお客さんが来たとしても話したくなかった。ここ最近ずっとそんなメンタルが続いていた。そうは言っても楽しげに会話することに慣れてきたのも事実、関西訛の酔っぱらいのお客さんに絡まれて1杯飲んで、お酒も入ったので言葉が出しやすくなり、また来てくださいね〜と思ってもないことを言って、その人を見送ったあとで少しずつ身体に痛みが出てきた。その後のことは省略する。

考えることが多すぎた。何をする間もありはしない。家に帰れば家事が気になる。布団に入れば布団の肌触りが気になり、カーテンの色が気になり、物の配置も設備も気になる。じっとしていれば腹が減る。調理をするかどうするか何を食べるのか、食欲と食費のことを考える。身の回りのすべて何もかもが噛み合っておらず、すべてが気に入らないのだが、どうしたらいいか。新しい打開策が何かないか。また考える。風呂に入っては体が気になる。髪が気になる。洗い方の正解だってまだ分かっていないのだ。散歩に行っては風が気になり、そのへんの木花が気になり、犬が歩いていれば犬が気になる。その犬はどんな家庭でどんな暮らしをしているんだろうか? 飼い主は何を考えながら犬を散歩しているんだろうか? 私も犬を飼っていたら…。そうしているうちに前から車が来て、あらあの車はもしかして私を轢くんじゃないかしらと警戒する。人は完璧ではない生き物で、それゆえ簡単に過失を犯すから…。私は1秒1秒忙しくて、もう何をする間もありはしない。

ふかふかのベッドに横たわっても、いつまでも快適ではいられない。そのうちふかふかの肌触りが嫌になってくるものだ。もうどこへも逃げられない! 焦ってふらふらと外へ出ては、どこかへ辿り着かないといけないとずっと思っている。ファミレスでもカラオケでも温泉でも行けばいいさ、でも、温泉に入りながら温泉について思案し始めるのは自分なんだよ。これは単なる気晴らしというだけでなくて「波動を上げるにはまずは自分の機嫌をよくするのが1番なんですよね、お気に入りのカフェでゆっくりしたり〜」みたいな割と意識的な取り組みなのだが、この調子では永遠に終わらない。一体何万円分パフェを食えばいいのか、何万回サウナに入ればととのうのか? 結局終わりが見えなくなってしまった。あぁ、忙しくて仕方がない。1円にもならないようなことで、いつまでこんなに消耗しないといけないのだろうか?

そんなこんなで、時々猛烈に腹が立つわけだ。つまらない!つまらない!クソゲークソゲークソゲー!ふざけるな!このままでは画面をかち割って、キーボードクラッシャーになってしまう。

他人は案外優しく、私のことを笑わない。理にかなっていることだ。人と人との間に居るのなら、優しくし合ったほうが快適に生きられる。ところが物と自分は私を笑う。家にいるあいだじゅう、気に入らない服やホコリを被った本がずっと私の邪魔をする。ほらね、やっぱり着ないでしょう? 一瞬興味がわいたからって、本当に一瞬だったね…。ずっとそうだ、他人は私に優しかったが、物は優しくなかった。使い飽きた枕は頭にチクチクして、勉強机はずっと部屋の隅に重く冷たく陣取って私を威圧していた。着るものを探してクローゼットを開ければ汚れのない制服がせせら笑ってきて、壁掛け時計は何も言わないのに目線だけで追いかけまわしてきて…。
家も部屋も教室も怖かったけれど、ネカフェの個室と安いビジネスホテルは好きだった。ホテルのま白いリネンは私を責めない。初対面の他人みたいに気を使ってくれる。その日初めて寝るベッドだ、それ以外の何でもない。そのことが何より安全をもたらしてくれた。
物との関係が難しくて、少しずつ断舎離するようになってからは精神にゆとりが出てきたみたいだ。私だって全部が気に入らないわけではない。少しくらいは好きなものもある。ただ、物と接するキャパシティが大きくないみたいだ。今回の引っ越しでもっと捨ててしまおうと思っている。これ以上自分の物で痛い思いをしたくないと思う。気に入らないのに買ってしまうことももうやめたい。