34 誰にもなりたくない

もう誰にもなりたくない、ただここにいたい。ただふつうにこの場所にいられて、自分だと思えることが、ほんとうに救いだと、思う。
もう、自分のことを誰だとも思いたくない。
私が歌うとき、誰かの歌をうたっても、うたうひとは私だけなのだ。
私のメロディが流れるとき、それは他の誰の物語でもないのだ。
それだけの当たり前のことでどうして?
もう明け渡さなくていいのだ。ぐちゃぐちゃにされることもないのだ。されない、ということを、選ぶことができる。そんなの当たり前のことだ。誰にだってほんとうはできることだ。でも、それだけの簡単なことをずっと求めて、ずっと…。

あのねぇ、大丈夫だよ、色んな、色んな、色んな人がいて、色んなことがあるんだろうけど。そして、私はそれを全部背負ってやることができないし、こんなにも、あまりにもできないなって、1ミリすらできないということに、悲観したり、悔しがったり、しくしく泣いたりするような、非生産的なことも、せめてしてやれたらいいんだろうけど、それすらもしないでね。つまらないな。
ただね。
私が祈るとしたら、そのお返事は、私が受け取りたい。だって私宛なんだから。それすらできないのはつらいことだ。繋がりがよくないということなんだから…。
私以外の何かが私に被っていたら、痛さも減るし、つらさも減るだろうが、かといって幸せとも、楽しいとも、安心とも薄くなり、ほんとうに大事な「通信」にも、皮一枚かぶせることになるんだ。もうぜんぶやめたいんだよ。
あー、今からでも走っていきたい。でも歩いたり、休んだりして、壊れないように行くんだからね。
待ち合わせ場所で待っていてね。