29 離陸と着陸

この身体の話をするのならば、
当たり前に生まれて、四肢が動き、知覚がされ、出かけて遊ぶことも、誰かと喋ることもできた。
走るのが遅いとか、体力がないとか、ちゃんと立っても、O脚だとかさ、色んなことを言うけれども。
ただ、この子は私の付属なだけで、私ではないので。
私は何故か歩くことがままならない。立つことも難しい気がする。何かにずっと掴まっている。時々元気なときがあり、勝手に走ることができる。これは、なぜ、できているのか、自分でわかっていないから、習得されない。あまりにも重いからうまく立てないのだと思う、だから軽くなっちゃえばいいと思う。軽くなってふわりと、飛んでみよう。地面のことは忘れてしまえば、結局なんだろうが、関係ないのだから。そう、たとえば本当は脚が折れてても、関係ないのだ…。いいの? つまり、二度と着陸できない、ともいうわけだ。こうなったら、地面が怖い。怖いからずっと浮くことになる。流されそう、流されそうで、やはり何処かに掴まらなければやっていけないだろう。ただ立つことがそんなに難しいか。一歩がそんなにも難しいか。掴まって立てるのならば掴まったらいい。手を貸すから。飛んでいってしまうよりも、ここにいてほしいから。そばにいたいから。