116 成る

多くのものを望まない。
ただ息を吸う。それから吐く。
ただ立っている。
私にはとある名前がある。
呼び方はなんでもいいし、いくつあってもよいけれども、それは私の存在を示している。
その名前を知っている人がいる。
それが私のことだとわかる。
今、目の前にいるのが誰であろうとも、君には君の名前がある。
私は君を呼ぶことができる。君も私を呼ぶことができる。
君も私も、誰も存在している。
それだけがずっとやりたかったこと。今もずっとやりたいこと。求めていたこと。憧れていたこと。
なぜ遠かったのだろう。
散り散りのピースを集めている。
歯車を探し、ネジをはめている。
もう一枚を重ねている。
振れた輪郭を合わせている。
水気の多いところを乾かし、渇きすぎていれば水を与えている。
余計な砂利を払いのけ、飛ばないように巨石をのせる。
彼は散り散りの思想に形を与えた。
まさにその時、名前を与えられ、今ここに有る。