楽しそうな子を見て腹が立った。
表現している子を見て腹が立った。
また、私はどこにもいない。過去にも今にも未来にもいなくて、どこかに外れてしまい、遠くなっている。
戻ってはいけないのだ、と、思う。自分の感覚がしっかりしてしまったら、あの子が羨ましいと、思ってしまうから。
あいつに腹が立つとか、納得がいかないとか、全部のことを思い出してしまうからだ。
誰かに教えてほしかった。もちろん、本当はとっくに教えてもらっていたようなことだが。自分自身からぽっくり外れたからといって、わたしがむかついたことも、わたしが嫌だと思ったことも、気に食わなかったこと、悲しいと感じたこと、つらいと感じたこと、恨み、浮かんだ激しい感情のすべても、全部がポイント制度で、たまり溜まって蓄えて、使われるときを待っているだけで、無かったことにはならないということ。
それでも、鮮やかになることは、救われることと近く似ている。
わたしは、たくさんの、幸せだったことをも、思い出すことができる。すべてが総じて美しく鮮やかになるはずだ。
なにもかもを鈍くしてはいけない。
