90 薄くってもいいよ。

1枚、1枚があまりにも薄くて
身に纏う感覚もあまりにも薄くて
どうしようもないと思ったとしても
構わないよ
たくさんの薄い布が折り重なって
いつの間に
濃くなるところができたり
グラデーションになったり
繊細で美しい作品になったりするものだから
薄いことを気に病まないで。
塗り重ねたらいい。それが美しいタッチになるから。

その時々のステージで支えてもらった。
三歩先がわからなくても、一歩先がわからなくても
半歩先ならかろうじて
理解できるかもしれないと
そういう時には本当にすぐ先だけを
教えてもらった。
私はそういうふうに愛してもらった。
それは本当に薄い布を
一枚ずつかけてもらうような愛だった。
そしてまた一枚、一枚を
誰かにかけていくような
そんな存在であってゆく者。
それは薄い。それなのに強い。
だから薄くってもいいよ。
重ねて。
そんなふうに、自分の由来の香った日。