14 あの膜は

膜の中では、ぼんやり夢を見ていました。鎖で繋がれ、灯りもなく、寒い、檻の中にいると思っていました。
本当は、無菌室で保護された子供。あたたかい、母のお腹の中で眠る赤子。それは、愛情のなか。平和のなか。心地よさのなか。まだ、卵の殻の中だから。
あの膜は私を護ってくれていたんです。
もういらないかな? いつでも愛も平和もあるとわかったから。もっと弾けて!大きくて!広くて!色鮮やかな!
あー、うれしい!うれしい!
飛び跳ねてしまうような。
たとえようもなく素晴らしい世界に生まれるよ。痛ささえ、楽しいよ。
あの膜は、素晴らしさの中に、たまに紛れた、ちょっとした砂や、塵が、私にとって大丈夫になるまで、私を護ってくれてた。